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服薬調整により歩行状態が改善した症例

症例:80代女性

在宅医療に至った経緯:近医に通院していたが、徐々に歩行が困難になったため通院が難しくなり、当院に訪問診療が依頼された。

初診時の状態:初診の半年前から歩行が難しくなっていた。シルバーカーで室内を少し歩行している(トイレまでは行けない)。歩行時は下肢を引きずるような感じ。立ち上がる際にめまいあり。両膝痛のため立ち上がりが困難になっている。座っている時間が長くなっているため、臀部に褥創あり。

<前医の処方>
アムロジンOD錠2.5mg 1錠
エディロールカプセル0.75μg 1C 分1 朝食後
プラバスタチン錠10mg 1錠
パリエット錠10mg 1錠 分1 夕食後
アレロック錠5mg 2錠
ユベラカプセル100mg 4C 分2 朝夕食後
デパス錠0.5mg 3錠
メリスロン錠6mg 3錠 分3 毎食後
プロマックD錠75mg 2錠 分2 朝食後就寝前
アクトネル錠17.5mg 1錠 分1 起床時 週1

#1 高血圧症
血圧が低いと転倒のリスクになります。本症例は、血圧は適正だったためアムロジンは継続。

#2 めまい症
立ち上がり時にめまいが生じるという訴えがありました。メリスロンが処方されていましたが、めまいに対するエビデンスはないため中止。めまいは起立性低血圧の可能性があり、立位後に血圧測定をしたが、立位による血圧低下はなし。念のため、急に立ち上がらないように生活指導をしました。

#3 脂質異常症
プラバスタチンは心血管疾患の一次予防のために処方されているようでしたが、優先度は低いと判断し中止。

#4 両変形性膝関節症、骨粗鬆症
アクトネルは飲み方が特殊ですが、しっかり飲めていることを確認し継続。NSAIDsの長期処方は避けたいので、膝の痛みにはカロナールを処方。

#5 神経症
デパスはふらつきの原因になるため、約3カ月間かけて少しずつ減らし中止。

#6 鉄欠乏性貧血
初診時の血液検査で判明したため、鉄剤を追加。鉄欠乏性貧血がめまいやふらつきの原因の可能性あり。約4ヶ月でHb 10.0→13.6、フェリチン10→56まで改善。

#7 臀部2度褥創
ずっとベッドに座っている影響により臀部褥創ができていました。ケアマネージャーさんに低反発マットレスの導入を指示。ずっと同じ姿勢で座らない生活指導をしました。

#8 逆流性食道炎
パリエットは継続。

#9 腹部皮膚炎
腹部の皮膚がよれているところに皮膚炎がありました。皮膚炎によりかゆみが生じておりアレロックが処方されているようでした。内服よりも腹部の皮膚を清潔に保つことが根本的な解決になると説明し、アレロックは中止。さらに、患者さんには口渇や便秘がありましたが、アレロックの副作用(高コリン作用)が考えられました。

<現在の処方>
エディロールカプセル0.75μg 1C 
パリエット錠10mg 1錠 分1 朝食後
フェロミア錠50mg 1錠
アムロジンOD錠2.5mg 1錠 分1 夕食後
カロナール錠500mg 2錠 分2 朝夕食後
アクトネル錠17.5mg 1錠 分1 起床時 週1

結果的に、10剤→6剤に減らしました。

歩行能力が低下し、ふらつきがみられ、転倒リスクが高い症例でした。5剤以上の内服で転倒が増えると言われています。優先度の低い薬をカットすることで減薬を図りました。また、ふらつきの原因になっていると思われる薬(デパス)を中止しました。

初診から半年が経過しましたが、歩行時のふらつきはなくなり、転倒もありません。以前より歩行状態は明らかに良くなっています。

(投稿者:斉藤 揚三)