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死亡確認にまつわる様々な疑問①

法医学的諸問題について、過去に「法医学者(医師)F先生」にいろいろ質問したことがあり、それが非常に参考になると思うので、一部編集して公開いたします。

 

私の質問:

死亡診断書記入マニュアル(厚生労働省医政局)によると、

 ① 診療継続中の患者以外の者が死亡した場合、

 ② 診療継続中の患者が診療に係る傷病と関連しない原因により死亡した場合

①と②の場合は「死体検案書」を作成し、それ以外の場合は「死亡診断書」を作成するらしいのですが、「診療継続中」とは具体的にどのような場合なのかわかりません。そして「心肺停止状態の患者」と「死体」はどう区別するのでしょうか?また「死亡したとき」とはどのようにして決めるのか?など様々な疑問があります。

例えば、次のような事例ではどう考えるべきでしょうか?

例1.高血圧と高脂血症で外来通院中の患者。

   最後の診察が2週間前だった。

   心肺停止状態で救急搬送され(死後硬直や死斑はなし) 、来院時は心静止。

   蘇生を行うも反応せず一貫して心静止。

   血液検査で心筋逸脱酵素の上昇あり、死因として心筋梗塞が疑われた。

① この患者は「診療継続中」の患者なのでしょうか?最後の受診が前日だったら?1時間前だったら?

② 来院時すでに死体?それとも心肺停止状態の患者?どっちでしょうか?

③ 死体だとすれば、診療行為に健康保険は適応されない?それとも全額自己負担?どっちでしょうか?

④「死亡したとき」はいつ?死亡確認時刻でよいのか?心停止となった推定時刻なのでしょうか?

 

法医学者(医師)F先生の回答:

 死亡診断書を書けるのは「診療継続中の患者が診療中の傷病に関連した原因により死亡した場合」となります。診療継続中の意味するところは、死因の病態を医師が十分に把握できているということのようで、そうであれば死亡診断書が書けるということらしいです。

自分自身が診療していなくても病院として誰か他の先生が診療中でありカルテ等で生前の病状が十分把握できれば死亡診断書がかけるということになります(そうでなければ、当直の時の他の先生の患者のお看取りも死体検案書で対応しなければならないことになります)。

多くの場合、臨床的に死亡は瞬間ではなく一連の経過と考えられるので(例外は明らかな即死で高所転落の脳挫滅とか)、実際には厳密な区別できません。死亡診断書(死体検案書)では分まで記入する欄がありますが、必ず記載しなければならないということではありません。

  死戦期が長い場合は心筋梗塞でなくても心筋逸脱酵素は上昇する場合があるってことを断った上で、まず、病死としていいのかどうか(ほとんどが病死でいいと思いますが)。状況から病死の可能性が高いのであれば、私が書くとしたら、その他の心筋梗塞を疑う状況(通院中の狭心痛の訴えや数日前より胸を痛がっていたといった家族の言)があれば頭蓋内の病変を除外した上で「急性心臓死(推定)/短時間(推定)」又は「心臓性突然死(推定)/短時間(推定)」(「心筋梗塞(推定)」でもいいと思います)としています。そうでなければ「詳細不明の内因死(推定)/不詳」又は「内因性の突然死(推定)/ 短時間(推定)」などとしています。

 定期的に通院しているのであれば最終の受診日に関わらず診療継続中になりますが、「診療継続中の傷病に関連した原因により死亡した」かどうかが問題になります。高血圧症と高脂血症を死因と関連する傷病とできるかどうかによると思いますが、死因を確定できない以上は「死因の病態を医師が十分に把握できている」とはいえないので死体検案書にするのが無難と思います。

 「来院時すでに死体?それとも心肺停止状態の患者?」ということについて、とりあえずは心肺停止状態の患者です。蘇生に全く反応がなかった場合で、遡って死亡推定時刻を入れる場合は、「結果として死体だったが、その当時は心肺停止状態の患者として扱っていた」ということになると思います。

 また、蘇生行為中はあくまでも心肺停止状態の患者という認識で治療行為を下ということになるので(労災は別ですが)健康保険で対応可能です。

 死亡診断書記入マニュアルによれば「死亡確認時刻ではなく、死亡時刻を記入(P7 3-(3)-②)」となっていますので、遡った推定時刻「○月○日○時 頃(推定)」と書くのが原則となっており、死亡確認時刻は「その他特に付言すべきことがら」に書くのが正しいらしいです。ただ遡って書くと遺族にとっては死んでいたのに気付かなかったとか死に目に会えなかった等で心労を与える場合があるので、硬直や死斑がなければ「○月○日○時○分(死亡確認)」でも間違いではないと思っています。

 

私のF先生に対する回答:

「診療継続中=死因の病態を十分に把握できていること」だとは、非常にわかりやすい考え方ですね!

つまり、死因の病態を十分に把握できれば「死亡診断書」が書ける。よくわからなければ「死体検案書」にしておいた方が無難。ってことですね!

ただ個人的には死因(死亡の原因)を「心臓死」と書くことに違和感を覚えます。心臓死って死亡の「原因」じゃなくって、死亡の「種類」じゃないの?って思ってしまいます。だとすると「急性心停止(推定)」「(その原因の欄に)不詳」って書くのがいいと思っています。

「死因の病態を医師が十分に把握できているとはいえないので死体検案書」って考えると確かにわかりやすいですね。

「結果としては死体だったが、当時は心肺停止状態の患者として扱っていた」というのは、これまた絶妙な表現ですね!でもわかりやすい!長年の疑問が解消されました。

いままでは「 本当は『死体』に対する医療行為だから保険は適用されないはずだけど、黙認されているのだろう」と思ってました。

「死亡したとき」はマニュアル通りなるべく推定時刻(〇分までは書かずに「頃推定」を入れる)を書いて、できるだけ付言すべき事柄に死亡確認時刻を書くようにしていましたが、実際、家族にいちいち説明したり、ナースとか事務とかいろんなところから問い合わせが来たりして面倒なんです。「〇月〇日〇時〇分(死亡確認)」でも間違いじゃないなら、今度からそう書くことにします。

(投稿者:斉藤 群大)