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「高齢者の薬物療法」の講演

薬剤の多剤併用により薬剤有害事象が起きていることをポリファーマーシーといい、社会問題にもなっています。当院ではできるだけ、薬を減らせないかを考えて診療しています。ポリファーマシーの問題で最も有名な東京大学 秋下雅弘先生の講演をまとめてみました。

第19回 日本在宅医学会大会 名古屋 2017.6.17

『高齢者の薬物療法 東京大学 秋下雅弘先生』の講演のまとめ

〇高齢者の薬物有害事象発生頻度
年齢が高くなればなるほど副作用がでやすい傾向
後期高齢者(75歳以上)では15%超に発生
高齢者の緊急入院の3~6%は薬物が原因

〇高齢者で薬物有害事象が増加する要因
複数の疾患を有する→多剤服用
臓器予備能の低下(薬物動態の加齢変化)→過量投与
認知機能・視力・聴力の低下→アドヒアランス(服薬率)低下、誤服用、症状発現の遅れ

〇薬物動態に関連した生理機能の加齢変化
消化管の機能は低下するのに、薬物吸収は変化しないのがポイント!つまり、血中濃度が上がりやすい。

〇薬物動態からみた対処法
少量投与から開始する(急性期疾患は例外)
長期的には減量も考慮

〇ポリファーマシーの定義
薬物有害事象、アドヒアランス不良など多剤に伴う諸問題を指すだけでなく、最近では、不要な処方、あるいは必要な薬が処方されない、過量・重複投与など薬剤のあらゆる不適切問題を含む概念へ発展。

〇何剤からポリファーマシー?
単純に数だけで決まるわけではないが…
薬物有害事象の頻度↑ 6剤以上
転倒の発生頻度↑ 5剤以上
5~6剤をカットオフとしてもよい

ポリファーマシーは栄養・ADL・認知機能低下に寄与するという報告あり

〇年齢階層別にみた処方薬剤数
75歳以上 5剤以上40%超える、7剤以上25%
ポリファーマシーのピークが80~85歳のところにあるのが驚き!

〇多疾患併存がポリファーマシーの主因
疾患数が増えれば増えるほど薬剤数が増える
複数科受診もポリファーマシーの要因→在宅医療を導入するメリット

〇ポリファーマシーを避けるために
予防薬のエビデンスは妥当か?高齢者に当てはめてよいか
対症療法は有効か?
薬物療法以外の手段は?
優先順位は?

〇要介護高齢者は管理目標が違う?
低血糖は認知症のリスク
逆に認知症は低血糖の発生リスク
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標はゆるくなっている

JSH2014 75歳以上の降圧目標 150/90mmHg未満
血圧が低すぎると認知機能が低下する

〇特に慎重に投与を要する薬物は
認知機能低下を理由とした「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」の代表的薬剤
抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系、抗コリン作用のある薬剤(三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬、オキシブチニン、H1受容体拮抗薬、H2受容体拮抗薬)

抗コリン系薬剤の累積投与により認知症発症リスクが増える

〇アドヒアランス(服薬率)をよくするための工夫
介護者が管理しやすい服用法 出勤前、帰宅後などにまとめる
秋下先生は高齢者には昼の薬はほとんど出していない

〇医師以外の職種だからできること
1薬を飲む様子から、服薬に困難がある状況が分かる
2飲むと体調が悪い、本当は飲みたくない、実際に飲んでいないといった訴えは医師以外の職種に伝えられることが多い
3医療環境の変化に伴い処方調剤の誤りが起きやすい
4疑問を感じたらとにかく確認を。医師以外のメディカルスタッフがエラーを防ぐ最後の砦

(投稿者:斉藤 揚三)