現在の高齢者医療の問題点は、処方される薬の数が多すぎることです。高齢者は多くの疾患を抱えるため、疾患ごとに医療機関を受診し、医療機関ごとに何種類もの薬が処方され、合わせるとかなりの数になることがあります。また、高齢になるといろいろな症状がでてきますが、症状に対して処方をするということを繰り返していくと、処方数が増えてしまいます。また、薬の副作用に対して、さらに薬が処方されることもあり、これは処方カスケードとよばれています。
東京大学医学部付属病院老年病科の秋下教授は、薬の種類が6種類以上になると有害な作用の発現が急に高まると報告しています。
当院はかかりつけ医として、総合的に診療することで、薬の数をコントロールできます。薬が10種類あれば、1位から10位までの優先順位があります。「クスリもリスク」と考え、本当に必要な薬だけを処方するようにしています。実際に、薬を減らすだけで、体調が良くなったり、食事が摂れるようになったりした症例を多数経験しています。
さらに、薬が多くなると、飲み方も複雑になり、飲んでいるのかいないのかも分からなくなります。在宅医療では、実際に飲み残しがあるのかどうかを直接見ることができますし、1日1~2回の飲み方に統一したり、一包化(一つの袋に入れる)することで、より確実に内服してもらうような環境づくりもしています。