在宅での褥瘡治療④ 体圧管理編
前回は開放性ウエットドレッシング療法について書いてきましたが、この方法だけでは治りません。
褥瘡の原因を除去しなければならないからです(むしろ、こちらの方が大事だと思っています)。
それが体圧管理です。
昔は褥瘡予防のため「2時間おきに体位変換(いわゆる体交)をする」などということが言われていましたが、現在は違います。文明の利器を使います。
文明の利器とは高機能エアマットレス(以下エアマット)と体圧測定器です。
それぞれ解説していきます。
エアマット
エアマットを使うことで、局所が沈み込み、接触面積を増大させて体圧を分散させることができます。
2度褥瘡くらいであれば、エアマットに変えるだけで治ってしまいます。
エアマットの注意点としては、体重設定を初期設定の50kgのまま使っている方がたまにいいることです。エアマットの効果を高めるためにも適切な体重設定がされているかに注意を払う必要があります。また、電源が切れて入れなおした時に初期設定に変わってしまい、そのままになっていることもあります(下の写真)。
エアマットを使い適切な除圧がなされていれば、2時間ごとの体位変換は必要ありません。これで、ご家族の介護疲れがなくなります。
また「ハンモック現象」にも注意が必要です。これは、エアマットの上のシーツをしわのないようにピンと敷くと、ハンモックのようになり体圧が上がってしまうことを言います。したがってシーツはだらしない感じでだらだらに敷くというのがポイントです。同様の考えから、横シーツやベッドパッド、バスタオルなどをエアマットの上に敷くことはエアマットの沈み込む効果を減じてしまうので推奨されません。
さらに、おむつを重ねたり、ガーゼを厚くあてるたりする(そもそもガーゼは必要ないのですが)と体圧が上がってしまうので、おむつはできるだけ少なく、薄くするのがポイントです。体圧の面から考えれば、創傷被覆材もできるだけ薄いものが理想です。
体圧測定器
体圧測定器は3万円くらいしますが、体圧を測定しないと、何が正しくて何が間違っているのか分かりません。
例えば、仙骨部に褥瘡ができていた場合、ベッドに寝ているのが悪いのか、イスに座っているのが悪いのかは、体圧を測定しない限り分かりません。イスに座っているのが悪い場合、いくらベッドにエアマットを入れても褥瘡は治りません。
また、除圧目的にクッションなどを入れているのをよくみますが、それが正しいのかどうかも体圧を測ってみないと分かりません。(クッションなどを入れる場合には、圧が一点に集中しないように、圧が全体にかかるように入れます。ちなみに円座は当たっている部位の体圧が上がってしまうため推奨されません。)
実際に体圧を測定してみると、エアマットの上にクッションを置いて除圧を図るよりも、エアマットに直接乗せたほうが体圧が低いことが往々にしてあります。
ぜひ体圧計を購入して、いろいろな場面で測定してみると良いです。
体圧を測定して50mmHg以下なら大丈夫です。
体圧管理に関してもっと詳しいことが知りたい方は以下の本を読んでみてください。とても勉強になります。
『体圧管理─体位変換に頼らない褥瘡対策 恩田啓二 医学と看護社 』