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大腿骨近位部骨折の保存療法

高齢者が増加するにつれて、高齢者に発生することが多い大腿骨近位部骨折を受傷される方の数も増加しています。

大腿骨近位部骨折は一般的に手術となるのが普通ですが、全身状態が悪かったり、もともと歩いていない、認知症で脱臼肢位が理解できない方(人工骨頭挿入術では)などは「手術適応がない」と言われて、自宅や施設に戻されることがあります。入院用のベッドは手術が必要な方で埋まっていますので、仕方ないとあきらめるしかありません。

今後、超高齢化社会を迎える日本においては、こういった例が多くなってくると思われます。

そこで今回は、大腿骨近位部骨折を受傷したが手術適応がない方を、自宅や施設でどのような点に注意してみていけばよいかについて書いていきます(これから手術を受ける方には当てはまらないので注意して下さい!)。

まず、大腿骨近位部骨折は、骨折が起こる場所によって大きく2種類に分かれ、そのタイプによって若干方針が変わってきます。

①大腿骨頸部骨折
2018-05-16_23h25_58
大腿骨頸部骨折は大腿骨の頸部という場所に起こる骨折です。このタイプの骨折は、保存療法で治ることはほぼなく、そのため偽関節になりやすい骨折として有名です。偽関節とは、骨折がくっつきそこねる事を言います。骨折した側の下肢に荷重をかけないからと言って治るわけではないことから、荷重制限は不要です(とは言っても実際は痛みで荷重をかけられない方がほとんどです)。

②大腿骨転子部骨折
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大腿骨転子部骨折は大腿骨の転子部という場所に起こる骨折です。大腿骨転子部骨折の場合は、3か月くらい経てば骨癒合することがほとんどです(骨折は治ります)。それまでは骨折した側の下肢は免荷(荷重をかけないようにする)とし、3か月経ったら荷重を許可します。しかし、3か月も歩かない状態でいると廃用が進み、荷重を許可しても結果的に歩けるようになる方はほとんどいません。

どちらの骨折も、骨折部がある程度安定してくるまで3週間くらいはかかり、その頃になると、痛みは徐々に治まってきます。痛みのためおむつ交換も大変な場合には、一時的に尿道カテーテルを留置することもあります。痛み止めは内服すると多少痛みが緩和されるくらいで、痛みを完全にとることはできません。最終的には車イスレベルのADLになることがほとんどです。

注意点としては、療養中は痛みのため寝たきり状態に近くなるので、褥創のリスクが高くなることです。そのため高機能エアマットレスの導入を検討しなければなりません。さらに、ベッドに寝た状態で食事を摂ったりするとムセやすく、誤嚥性肺炎のリスクも上がりますので、食事の際はギャッチアップをして、ムセに注意して食事を摂らせないといけません。また、寝たきり状態になっていると深部静脈血栓症にも注意が必要です。足関節の運動ができれば予防になります。

介護者によく聞かれるのが、「骨折した側の下肢をどれくらい動かしてもよいのか?」ですが、どちらのタイプの骨折も「痛みの範囲内で動かしても良い」となります。おむつ交換の際などは、骨折していることを意識しながら、愛護的に下肢を動かすようにします。車イスにも痛みに応じて離床しても良いです。むしろ上述の寝たきりに伴う合併症を防ぐためにも、不必要な安静を避け、積極的に離床させるべきです。

(投稿者:斉藤 揚三)