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治さなくてよい認知症

世の中はGWの真っ最中ですが、当院は本日も定期の訪問診療をしています。

本日は、『治さなくてよい認知症』(上田諭、日本評論社)を紹介します。
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コウノメソッドでは、患者と家族のどちらかしか救えないとしたら家族を救えと言います。コウノメソッドで認知症を治療していると、どうしても患者さんの状態がどうなのかを家族に聞くことが多くなって、患者さん自身に問いかけることが少なくなってきてしまいます。長年、認知症患者さんの診療に携わってきた筆者は、そういった風潮を否定し、医者は誰の方を向いて治療をしているのか、患者さん本人にこそ向かい合わなければいけないと言っています。

まず、家族に認知症は治らない(脳機能の低下は避けられない)ことを理解してもらうところから始まると言います。この認識が誤っていると、指摘したり、怒ったり、注意したりしてしまい、認知症に悪影響を及ぼしてしまいます。

大事な事は、治せない認知症を治そうとすることではなく、認知症を持ちながらも生き生きと生活できるかどうかということで、認知症診療とは「生活を診る」ことだと言います。具体的には、どのような生活をしているのか、他者との交流や活動はあるのか、生活に楽しみや張り合いはあるか、介護は適切に行えているのか、介護者に無理な負担はかかっていないか。それらを確かめ、対応を考え、本人や家族に面談をする(これは医者というよりケアマネージャーの視点に近いのかもしれません)。

生活に張り合いを持たせる方法として筆者はデイサービスへ行くことを勧めています。そうやって、生活のリズムが整い、役割や楽しみのある生活があるからこそ、抗認知症薬が力を発揮するとし、症状を聞いていきなり投薬するという今の認知症治療へ警鐘を鳴らしています。

本書を読むと筆者が、いかに認知症患者さんと地を這うようにして向き合ってきたのか、そして認知症患者さんへの愛が伝わってきます。そういう筆者の言葉だからこそ一段と重く、説得力があります。自分の普段の診察を省みるきっかけになりました。この本は、認知症患者さんに関わるすべての方(医師や介護職や家族など)に読んでいただきたい本です。

(投稿者:斉藤 揚三)