「帰宅願望が強い」という訴えについて
2021.09.08
施設入居している患者さんで、「帰宅願望が強くて困っています」と、施設スタッフから相談されることがあります。
おそらく、薬でどうにかしてほしいのか、あるいは、こちらから「家には帰れません」と患者さんに言ってほしいのかだとは思います。
しかし、「家に帰りたい」というのは誰しもが持つ正常な考えです。正常な考えを薬で抑えることはできません(抗精神病薬を大量に使うことでぐったりさせれば言わなくなるかもしれませんが、人道的に問題があります)。
ヘルパーなどの在宅のサービスを利用して、なんとか家に帰る方法を模索するというのも一つです。
よく、「日中一人になるので家に帰れない」と言われることがありますが、日中誰もいない中で急変して亡くなる可能性も許容するのであれば、家に帰ることはできると思います。
さまざまな理由で家に帰れないのであれば、なぜ帰れないのかについてよく説明し、納得させなければなりません。
認知症だからという理由で、何も説明せずに施設に入居させているのであれば、帰宅願望がでるのは当然だと思います。
また、「良くなったら家に帰りましょうね」と、その場しのぎで言っている場面も目にしますが、実際に家に帰れる見込みがないのに、そのような事を言うのもいかがなものかと思います。
「家に帰りたいんですね」と患者さんの言葉に共感し、帰る方法を模索する。どうしても帰るのが無理であれば、帰れない理由を繰り返し説明するしかないのではと思います。
帰宅願望は医療の問題ではなく、介護の問題です。患者さんと家族、ケアマネージャーさんと施設入居を続けるのかについてよく話し合しあっておくべきだと思います。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:在宅医療・訪問診療