せん妄の非薬物的対応
勤務医の時は整形外科の病棟をみていましたが、術後にせん妄になる患者さんが多く、頭を悩ませていました。
精神科に紹介できればよかったのですが、なかなかそういった環境にいることがなかったため、自分で指示を出すしかありませんでした(精神科の先生としては、せん妄は身体疾患で精神疾患ではないとのことで、あまり関わりたくないのが現状のようですが)。
現在、認知症治療も勉強しているため、今だったらこのようにするかなということを書いていきたいと思います。
せん妄治療の第一選択は非薬物的治療のようです。
「トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 仲田和正 CBR」より抜粋します。
・複数薬剤(ポリファーマシー)でせん妄の相対危険率は2.9倍となる。
→できるだけ減薬する。
・向精神薬を使うと4.5倍。睡眠薬を使うと4.5倍。
→できるだけ向精神薬、睡眠薬は使わない。
・身体拘束をすると3.2~4.4倍。
→なるべく身体拘束をしない。
・膀胱留置カテを入れると2.4倍。
→膀胱留置カテは適応を考える。間欠導尿で対応する。入れても早期に抜去する。
・BUN高値があると5.1倍。
→脱水を改善させる。
・血糖、Na、K異常で3.4倍。
→電解質バランスの補正。
・視力障害があると2.1~3.5倍、難聴があると1.3倍。
→メガネ、補聴器、義歯をつけてもらう。
・お気に入りのもの(家族写真、毛布、数珠、お気に入りの本、音楽など)を持ってきてもらう。
・せん妄中は家族がシフトを組んで24時間一緒にいてもらう。
・患者さんには、静かに落ち着いた声で今どこに何のためいるのか繰り返して説明する。
・指示を出すときは一度に一つ。
・マッサージは落ち着かせるのに有効なこともある。
・疼痛コントロールや早期リハビリも重要。
次回はせん妄の薬物治療について書いていきます。
(投稿者:斉藤 揚三)