せん妄診療実践マニュアル
2020.09.13
『せん妄診療実践マニュアル 井上真一郎 羊土社』
本の帯には、「日本をリードする岡山大学病院精神科リエゾンチームの診療ノウハウを余すことなく一挙公開!!」とあります。期待をもって読み進めました。
一読すると、内容は至極真っ当で、良書でした。
せん妄には、直接因子(引き金になる)、準備因子(起こりやすい素因)、促進因子(促進・遷延化させる)の3つの因子があり、せん妄治療は、直接因子と促進因子を取り除くことから始めると書かれています。
つまりせん妄対策は引き算が大原則であり、薬物治療は対症療法に過ぎないのです。このことは本書では特に強調されています。
とは言っても、最終的には薬物も使わなければなりませんが、薬の使い方に関しても具体的に書かれていて分かりやすいです。
当院でよく処方している、トラゾドン、クエチアピンは本書でも推奨されています。
高齢者というだけでせん妄のリスク因子です。高齢化社会を迎えている日本では、せん妄は、医療従事者にとって避けては通れません。
その意味で、医療従事者すべてに勧められる本です。
(投稿者:斉藤 揚三)