ねころんで読める新しいリハビリ
『ねころんで読める新しいリハビリ 上月正博 メディカ出版』
筆者は東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野教授の上月正博先生です。
この本は、猫のイラストなどがあり、気楽に読める本にも関わらず、とても内容が濃く勉強になります。
副題には、「内部障害リハビリテーションの驚くべき効果」とあります。内部障害とはあまり聞きなれない言葉ですが、心臓、腎臓、肝臓、肺、膀胱、腸などに障害があることを言います。たとえば、心不全、腎不全、呼吸不全などが内部障害にあたります。高齢者は内部障害を有する方が多く、高齢化社会とともに、必然的に内部障害のある方の数も増えてきています。当院が在宅医療で診ている患者さんも、ほとんどが内部障害を持っています。
今まではリハビリというと、脳卒中で麻痺が起きた方、または整形外科の手術後の方に行っているというイメージがありましたが、高齢化社会になるに伴い、内部障害の方のリハビリが増えてきています。本書では、内部障害リハビリテーションの驚くべき効果について書かれています。生活機能予後、さらには生命予後も改善します。
本書にでてくるリハビリのプログラムを見てみると、まず量がすごいことに気が付きます。東北大学病院リハビリテーション科病棟では、心臓リハビリテーションで入院した患者は毎日1万歩を歩いてもらうそうです。また、認知症の方に対する下肢運動プログラムでは、エルゴメータ(自転車)運動を1日1時間行うそうです。以前、ブログで取り上げた「間違いだらけのリハビリテーション」でも起立ー着席運動を1日400~600回行うことを勧めています。やはり、リハビリで結果をだすには圧倒的な量が必要なのでしょう。
これだけの量をやってもらうには、医療スタッフの熱意がなによりも必要です。本書にも書いてあるように、患者にリハビリを勧める前に、「まず隗より始めよ」の言葉どおり、医療スタッフ自身が運動することが重要なのかもしれまん。
ちなみに、本書で、透析中にエルゴメータを用いて運動療法をしている写真が載っていましたが、これなら在宅で寝たきりの方にも応用できるかなと思いました。
(投稿者:斉藤 揚三)