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カルシウムのサプリメント

先日、訪問診療で診ている患者さんから、「薬局で骨密度検査をしてサプリメントを買ってきた」という話しを聞きました。

詳しく聞いてみるとこういうことでした。

近所の薬局で、骨密度の無料検診をやっていたので行って、骨密度を測定してもらったら、YAM53%(若年成人の平均値を100としたときの%、70%以下で薬物治療開始)で、カルシウムのサプリメントを勧められて買ってきたとのことでした。

これは3つの点で問題があります。

まず、骨密度の値が信じられるかです。正確に骨密度を測定するためには、DXA(dual-energy X-ray absorptiometry)で、腰椎と大腿骨近位部を測定しなくてはいけません。おそらく薬局にあったのは超音波で骨密度を測定する装置のはずです。それでは、骨粗鬆症のスクリーニングはできますが、確定診断はできないのです。

また、骨粗鬆症の治療ガイドラインで、カルシウム薬はエビデンスレベルが低く、心血管合併症などの報告もあり、当院では基本的に処方しません。

さらに問題なのは、この患者さんは当院より骨粗鬆症の治療薬として活性型ビタミンD製剤(エディロール0.5μg)を処方していました。エディロールは、消化管からカルシウムの吸収を促進させ、骨密度を上昇させ、椎体骨折を抑制するというエビデンスがあります。また、転倒を抑制するともいわれています。こういった優れた効果の一方で、高Ca(カルシウム)血症のリスクがあります。エディロールは0.5μgと0.75μgとの2種類ありますが、高Ca血症のリスクのため、当院では主に0.5μgを使っています(実際は0.5μgと0.75μgでの高Ca血症の頻度は変わらないようですが)

エディロールにカルシウム製剤を併用すると、さらに高Ca血症のリスクが高まります。薬局では骨密度が低いのでサプリメントを勧めただけなのかもしれませんが、高Ca血症が出現したら誰が責任を取るのでしょうか?

ちなみに高Ca血症となると、脱水(口渇、多飲、多尿)、食欲低下、倦怠感、便秘といった症状がみられ、進行すると意識障害、腎障害を呈することもあります。

(投稿者:斉藤 揚三)