プライマリ・ケア医のための心房細動入門
2021.04.15
『プライマリ・ケア医のための心房細動入門 小田倉弘典 日経BP』
訪問診療をしていると心房細動をよくみますが、それもそのはずで、高齢化社会に伴い心房細動の患者数は増加しており、心房細動患者の50%以上は75歳以上とのことです。
心房細動というと脳梗塞の合併症が思い浮かびますが、実際には心不全の合併症の方が多いようです。心房細動が心不全の原因になっており、一方、心不全が心房細動の原因になっています。これは、鶏と卵の関係と同じです。まずは心不全の治療をしっかり行うことが重要であることが分かりました。
CHA₂DS₂-VAScスコアが2点以上(脳卒中リスク 2.2%/年)の場合は、原則として抗凝固薬を投与します。また、高齢になるにつれて、抗凝固薬による大出血のリスク増加率よりも、脳梗塞のリスク低下率の方が大きいというエビデンスが多くでているようです。しかし、一律に抗凝固薬を処方するのではなく、腎機能、血圧、併用薬剤、服薬アドヒアランス、フレイル、社会的サポート、介護拒否などについて、症例ごとに一つずつ考えていく姿勢が、最適解につながるのではないかと書かれています。
心房細動だけに目を奪われるのではなく、患者さん全体を見ながら心房細動をみなければならないということが、本書の一貫したテーマだと思いました。
プライマリケア医向けで、読みやすく分かりやすい本なので、高齢者診療に携わる方には一読をお勧めします。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:書評