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体温37℃台の敗血症

症例:中心静脈栄養をしている80代男性。尿道カテーテル長期留置中。腎盂腎炎で2回入院歴あり。自宅で療養中。

夜間に37.3℃の発熱がみられるとご家族から電話がありました。

他のバイタルサインを確認すると…
血圧120/99mmHg、脈拍114回/分、SpO2 96%、呼吸数40回/分とのこと。
数日前から夜間せん妄が強くなっている。
1日の尿量が低下している。
咳や痰がらみはないとのことでした。

この話から、緊急性が高いと判断し、夜間往診をすることにしました。

体温は37.3℃ですが、なぜ緊急性が高いと判断したのかについて解説します。

デルタ心拍数20ルール:体温が1℃上昇すると、脈拍は約20回/分上昇する。20回/分以上上昇している場合は細菌感染症の可能性がある。

この患者さんの普段のバイタルサインを振り返ってみると、体温36.8℃、脈拍85回/分でした。体温が0.5℃しか上がっていないのに、脈拍が29回/分も上昇していました。

呼吸数20回/分以上は頻呼吸で異常

敗血症は臓器への血流障害を引き起こす。脳血流が低下すると、不穏、不安などの軽度の意識障害が起こりやすい。腎血流が低下すると乏尿となる。

qSOFA:感染症が疑われる患者において、「意識変容」「収縮期血圧100mmHg以下」「呼吸数22回/分以上」のうち2項目以上を満たすと敗血症が疑われる。

この患者さんの場合は、意識変容、呼吸数22回/分以上の2項目を満たしています。

以上、病歴とバイタルサインだけで、尿路感染症による敗血症を疑いました。

往診してみると、バイタルサインは、ご家族の計測とほぼ同じでした。

状態は非常に悪かったですが、在宅医療でできる治療を希望されたため、中心静脈栄養の点滴ラインの側管から抗生剤をすみやかに投与しました。

血液検査では、白血球数20700/μL(好中球分葉核球91%)、CRP5.04mg/dLで、細菌感染症が強く示唆されました。抗生剤は計7日間投与し、感染は落ちつきました。

37.3℃だけで判断すると、クーリングや解熱鎮痛薬で経過をみるように言ってしまうかもしれませんが、そうすると、敗血症が放置されショックに移行し急変する可能性が高くなります。

高齢者では、基礎体温は低下しており、発熱物質に対する体温中枢の反応も低下しています。また解熱鎮痛薬を飲んでいたりで、感染症であるにも関わらず体温が上がらないことがあります。

体温以外のバイタルサイン(意識レベル、血圧、脈拍、呼吸数、尿量)に注目することで、敗血症を疑い、早期に対応することができました。

(投稿者:斉藤 揚三)