在宅での尿路カテーテルフリーを目指して
膀胱留置カテーテルが入った状態で訪問診療が開始されることはよくあります。
当院では、漫然とカテーテル交換を継続するのではなく、常に抜くことが出来ないかを考えながら診療しています。
最近、当院の訪問診療が開始されてから、膀胱留置カテーテルが抜去できた2症例を経験したので報告します。
1例目。とある骨折で約3ヵ月間病院に入院。入院中に膀胱留置カテーテルが入った。退院前に抜去されたが、自尿なく再挿入されて退院。入院によって廃用が進み、車椅子全介助レベルのADLになり、退院と同時に当院の訪問診療が開始された。
膀胱留置カテーテルを入れておくメリットは、おむつ交換の回数を減らすことができるので、介護の負担を減らすことができることです。デメリットとしては、患者さんが常に違和感を感じること、せん妄のリスク因子になること、尿路感染症のリスクが高まることです。これらをご家族に説明したところ、試しに抜いてみたいとのことだったので、抜去してみました。
その後、順調に自尿があり、膀胱留置カテーテルから離脱できました。
このような症例はよくあります。入院して、疾病の管理目的やADL低下のためとりあえずカテーテルが挿入されることがあります。カテーテルが挿入されてから日が浅い場合は、膀胱の機能は保たれている可能性が高いです。入院中に抜去が失敗したとしても、在宅に戻ってから、もう一度抜去を試みることはできます。
2例目。病院の泌尿器科で神経因性膀胱と診断されてから、約2年間くらい膀胱留置カテーテルが挿入されていた方です。かかりつけ医でカテーテルが管理されていました。しかし、実際には7〜10日くらいでカテーテルが詰まってしまい尿漏れがおきるため、入所中の施設でその都度交換されていました。通常、カテーテルは2〜4週で交換するため、この回数は明らかに多いです。
通院困難なため当院に主治医が変更になりましたが、「尿漏れが起こっているのであれば、カテーテルを抜去しても尿は出るのではないか?」と考え、抜去してみました。
すると、その後順調に尿が出ています。この症例は2年間もカテーテルが入っていましたが、離脱することができました。
万が一、カテーテルを抜いて尿が出ない状態(尿閉)になってしまったとしても、訪問診療であれば、夜間であっても往診してカテーテルを挿入すればいいだけなので、その点、気軽?にカテーテル抜去を試みることができるのかもしれません。
これは訪問診療の強みだと思います。
(投稿者:斉藤 揚三)