在宅での褥瘡治療② 理論編
2019.03.06
褥瘡治療とは、軟膏の種類を変えてみたり、創傷被覆材を変えてみたりすることではありません。
褥瘡を治すには、「なぜ褥瘡ができるのか」、「傷(キズ)が治るということはどういうことなのか」といった、理論的な背景を知っておく必要があります。
まず、褥瘡に限らず、傷を治すのには湿潤療法が適しています。
湿潤療法とは傷を乾燥させずに、湿潤環境(湿った環境)に置くことで治す治療法です。
傷を治すのには消毒やガーゼは必要なく、約20年前に夏井睦先生が提唱して、ようやく一般的になってきた治療法です。
もちろん褥瘡も傷なので、湿潤治療が適するのですが、褥瘡が外傷の傷と違うのは、
「治療経過中も受傷機転が持続する」というところなのです。
これはどういうことなのかと言うと、外傷の傷であれば、一回の外力を受けて傷ができ、その後外力を受けることはないのですが、褥瘡にはつねに外力(圧迫やずり応力など)がかかり続けるのです。
さらに分かりやすく説明すると、傷ができて、常に傷が開くように力をかけていたとしたら傷が治らないのと同じ理屈です。
つまり、湿潤環境に置いておきさえすれば、全ての褥瘡が治るわけではないのです。
また、もう一つの問題として、褥瘡はつねに浸出液がでることが挙げられます。この浸出液には傷を治す成分が含まれていると言われており、褥瘡が治る過程では重要な役割を果たします。しかし、褥瘡をただ密閉してしまうと、浸出液が停滞して感染の原因になったり、浸出液で褥瘡周囲の健常な皮膚がただれてしまったり、臭いがひどくなったりという問題が生じます。
この2つの問題を解決する方法が、体圧管理と開放性ウエットドレッシング療法です。
次回から体圧管理と開放性ウエットドレッシング療法に分けて説明していきます。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:褥創治療