在宅医療における不適切な処方
2018.10.09
この論文によると、日本で在宅医療を受けている高齢者4815人(平均82.7歳)を調査したところ、不適切な処方(PIM;Potentially Inappropriate medication)がされていたのが48.4%にものぼり、実際に薬剤有害事象(ADEs;adverse drug events)が起きていたのは8%だったそうです。
すなわち、2人に1人は不適切な処方がされ、そのうちの約1割に実害が生じていたのです。
論文の表をみると、不適切な処方数と薬剤有害事象の数が圧倒的に多いのはベンゾジアゼピン系で、薬剤有害事象の比率が高いのは抗ヒスタミン薬(抗コリン薬)だと分かります。
特に日本では、ベンゾジアゼピン系の処方数が諸外国に比べて多く、それだけ有害事象も多く起きており、社会問題にもなっています。
他には、ジゴキシン、スルピリド(ドグマチール®)、刺激性下剤の慢性使用、H2ブロッカーにも注意が必要です。
このブログでもたびたび、これらの薬の問題を取り上げてきましたが、再度まとめてみます。
ベンゾジアゼピン系は、認知機能低下、せん妄誘発、筋弛緩作用により転倒→骨折のリスクがあがります。
抗コリン薬には、認知機能低下、せん妄、口腔乾燥、便秘などの副作用があります。
ジゴキシンは、ジギタリス中毒(嘔吐、食欲不振など)の原因となります。高齢者に使う場合は0.125mg/日以下にし、血中濃度は0.5~0.8ng/mLの低めで維持します。
スルピリド(ドグマチール®)は薬剤性パーキンソニズムの原因となります。高齢者に使う場合は50mg/日以下にします。
H2ブロッカーはせん妄を誘発します。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:薬剤