変形性関節症に対するサインバルタの処方について
2020.06.19
デュロキセチン(商品名:サインバルタ)は抗うつ薬ですが、2016年12月に「変形性関節症(OA)に伴う疼痛」にも適応が拡大されました。
それによって、整形外科でもサインバルタが処方されるようになりました。
抗うつ薬であるサインバルタが痛みに効く機序は、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を介して、下行性疼痛抑制系を活性化させることによるとされています。
添付文書では、まず20mg/日から処方し、その後60mg/日まで増量することになっています。
国際変形性関節症学会(OARSI)の最新(2019年)のガイドラインでは、サインバルタは、全身疼痛あるいはうつ状態の膝OAに対してLevel2(弱い推奨度)となっています。
このガイドラインでは、サインバルタの推奨度はそれほど高くなく、うつに限って効果があるとのことですが、実臨床でも同じような実感があります。
問題は、普段うつ病患者を診察しない整形外科医が、うつかどうかの判断をしなければならないところにあります。また、薬の増量・減量のさじ加減も、抗うつ薬を使い慣れていないと難しいです。
痛み止めの感覚でサインバルタを処方すると失敗します。あくまでも抗うつ薬なので、OAに対して処方する場合は、うつ+膝OA限定で処方すべきだと考えます。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:整形外科