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急性心筋梗塞の症例

症例:60代男性

40代で2回脳梗塞を起こしている影響で、ADLは車いすレベル、構語障害(言葉は理解できるが話せない)がある方です。60代と若いですが施設に入居しており、当院の訪問診療をうけていました。

とある日曜日の朝9時頃に施設より電話がありました。

話を聞くと、6:30頃オムツに排便しており、オムツ交換後、車いすに乗って洗面所に移動していた際に1分程度の意識消失があったそうです。

その後、ベッドに横にして休ませるも、血圧70台、脈拍40台、体温34℃台が続き、表情もすぐれないとのことでした。

話を聞いたときは、排便に伴う意識消失・低血圧とのことで、迷走神経反射を考えました。しかし、迷走神経反射であれば、低血圧が持続することはないので、何かがおかしいと感じ往診することにしました。

9:20頃に施設に到着し、バイタルサインを測定しました。

血圧74/45mmHg、呼吸数15回/分、SpO₂ 99%、脈拍61回/分、体温36.1℃でした。

どこか調子が悪そうでしたが、痛いところがあるか聞いても何も訴えることができませんでした。

この方は、普段の血圧は110~120/70~80mmHg程度で、今まで低血圧になったことはありませんでした。内服薬は、バイアスピリンのみで、降圧薬の内服もしていませんでした。

原因は分かりませんでしたが、ショック状態であるため、原因検索が必要と判断し、病院に連絡し、救急搬送を受け入れていただきました。

病院での心電図

心電図では、Ⅱ,Ⅲ,aVF誘導でST上昇あり(V2~4ではST低下あり)。

急性下壁心筋梗塞の診断で、緊急カテーテル検査が行われ、右冠動脈が99%狭窄しており、薬剤溶出性バルーンで拡張を行い、良好な拡張と血流が得られたとのことです。

【この症例での教訓】

まず、何となく様子がおかしいとのことで施設から当院に連絡があったのが良かったです。普段から患者さんによく接している介護職員さんだったため、早期に異常に気づくことができたのではないかと思います。

当院でも、「バイタルサインの異常を放置してはいけない」という原則に従って行動しました。ショックの原因として心原性ショックを疑い、心電図をとれば良かったですが、そこまで想起できなかっことは反省点です。

もっとも、病院の循環器内科の先生が、休日にも関わらず迅速にカテーテル治療をしていただいたことが、最大の功績であるのは間違いありません。

施設や当院で、様子観察としていれば、お亡くなりになっていたと思われます。施設→当院→病院の連携によって、患者さんの命を救うことができたのではないかと思います。

(投稿者:斉藤 揚三)