抑肝散 処方の際の注意点
2020.01.21
認知症の行動・心理症状(BPSD)に対して、漢方薬の抑肝散が効くことが知られており、当院でもよく処方しています。
しかし、BPSDがあれば、なんでもかんでも抑肝散を処方すればよいわけではないので注意が必要です。
抑肝散は、BPSDの中でも、興奮、妄想、幻覚などの陽性症状に効果があり、うつ、食欲不振などの陰性症状には効果はありません(逆に陰性症状を悪化させることもあります)。
当院では、抑肝散が処方されていて食欲不振がある方には、まずは抑肝散を止めてみることにしています。
また、抑肝散の効果判定は2~4週程度で行い、効果が感じられない場合は漫然と続けず、中止するべきです。
漢方薬だから安全なわけではなく、抑肝散には甘草が含まれているので、長期の内服で偽性アルドステロン症(低カリウム血症、四肢脱力、高血圧、浮腫)が生じる恐れがあります。
抑肝散を内服する80歳代の患者を対象とした報告で、低カリウム血症が約6%に発症しているというものもあり、カリウムの値は定期的にチェックしておく必要があります。
参考図書:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:漢方薬