死亡確認にまつわる様々な疑問⑤
実際の臨床現場でありそうな例をあげて、私と「法医学者(医師)F先生」とで行ったやり取りを引き続き公開いたします。
例5.他院で「てんかん」と診断され、抗けいれん薬を内服している患者。
階段で明らかなてんかん発作を起こし転落し、目撃していた家族が救急要請。
搬送された救命救急センターは初診。
頭蓋骨骨折と急性硬膜下血腫などのため手術を受けた。
術後、細菌性髄膜炎を発症し、治療に反して病状は悪化。
受傷より1週間後に永眠。
私:(ア)直接死因は「細菌性髄膜炎」、(イ)は「頭部外傷(又は「頭蓋骨骨折及び急性硬膜下血腫」)」、(ウ)は「てんかん」でよいのでしょうか?
F先生:正しいです。
私:死因の種類は「外因死」?原死因が「てんかん」なので「病死」なのでしょうか?
F先生:明確な根拠(目撃等)があり「病死」として大丈夫です。「てんかん(推定)」「1.病死及び自然死(推定)」が無難です。
私:てんかんや脳卒中などで交通事故を起こした場合は「病死」か?「外因死(交通事故)」か?どちらでしょうか?
F先生:てんかん(同乗者の証言がなければ難しいですが)や脳卒中などが原因で交通事故を起こした場合は「病死」となります。交通外傷が致死的でない場合は「病死」としやすいですが、交通外傷が致死的であった場合、どちらが先行したかが問題になります(だいたいは病気先行でしょうけれども)。結局解剖してもわからないことが多いです。保険金がかなり違う場合が多いですので「脳卒中又は多発外傷」「12.不詳の死」とするのが無難です。
私:この書き方も使わせてもらおうかと思います。でもここまで微妙なケースは警察が解剖に回すでしょうし、今後自分が書くことはないかもしれませんが。
F先生:死亡診断書・死体検案書のどちらを発行するかで迷う様なケースは極論を言えばどちらでもまちがいではありません。医師がしっかり判断するのは、明らかな病死か否かです。わからないものはわからないとするしかありません。
私:わからないのに無理に書こうとすると「何でそう書いた?」って追求されるかもしれませんし、金がからむと恐ろしいですからね。まわりの医者を見るとかなり適当に書いていて、「大丈夫かよ!」って思うことが多々あります。
(投稿者:斉藤 群大)