病気スレスレな症例への生活処方箋
『病気スレスレな症例への生活処方箋 浦島充佳 医学書院』
この本は、病気になりかけている患者さんに、いかに生活指導をしていくのかについて書かれています。本書が対象としている病気スレスレの人でなくても、病気の人でも生活指導は大切です。医師の診療はともすれば、「薬を処方して終わり」ということになってしまいがちですが、病気を治療する以前に、生活習慣を改善させなければなりません。ここをおろそかにして、病気の治療をしてもうまくいかないのです。
とはいっても生活指導は、どのようにしたらよいのか分からないというのが現状ですが、この本では具体的な指導方法が書かれています。
例えば、
処方箋
#1 近所の公園まで散歩する
1か月後受診まで有効
処方箋
#1 外食、おやつ、間食、軽食を1日1回、果物、野菜、ナッツに変える。
1か月後受診まで有効
といった具合です。薬ではなく、本来このような処方箋を書きたいものです。
この生活処方箋のメニューは自ら試すことで、説得力もでますし、引き出しを多く持つことにもなります。
また、生活処方箋を出した際に、達成できるかを「絶対無理を0%、絶対できるを100%とした時に自信のほどは何%かをたずね、60%未満であれば見直す」という記載が参考になりました。いくらいいことでも、一方的に押し付けてもうまくいかないのだと思います。
「医者の不養生」という言葉があるように、医師は激務に追われて、自分の体のことを二の次にしてしまい不健康になりがちです(昔の自分がそうであったように)。しかし、健康だからこそ患者さんを診られるのであって、健康な状態を維持するのも仕事のうちだと思っています。この本はエビデンスとともに書かれているので、エビデンスがないと信用しない医師にも説得力があります。そういった意味で、医師自らが健康になるために読む本とも言えるのかもしれません。
(投稿者:斉藤 揚三)