老衰からの復活!
症例:96歳女性
既往歴:アルツハイマー型認知症、狭心症、慢性心不全、高脂血症、右大腿骨転子部骨折術後
当院初診までの経過:H30年2月中旬頃から徐々に歩行器歩行が難しくなってきていました。H30年3月末頃より、食欲不振、歩行困難となり、通院が困難となったため、当院を紹介されました。H30年4月初めに当院を初診した際には、寝たきり状態で、呼びかけに対する反応も希薄、食事も1食あたり数口程度の摂取量でした。診察の結果、老衰状態と考えられ、当院で介入してもどこまで回復するのか分かりませんでしたが、できる限りの事をしてみることにしました。もちろん、回復しない可能性は高いこと、急変もあり得ることは説明しました。前医の処方薬は以下になります。
ラニラピッド錠0.05mg 1錠
ダイアート錠30mg 1錠
プラバスタチン錠5mg 1錠
リスパダール内用液1mg
エディロールカプセル0.75μg 1C
L-アスパラギン酸Ca錠 分1 朝食後
メマリーOD錠20mg 1錠 分1 夕食後
ペルサンチン錠25mg 3錠
マグミット錠500mg 3錠
カロナール錠200mg 6錠 分3 毎食後
アストミン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後
11剤の薬がでていました。まず、必要最小限の薬とすることで、食欲が回復することを期待しました。また、濃厚流動食による栄養補給と訪問リハビリを導入しました。
初診時に以下の処方薬に切り替えました。11剤→6剤への減薬。
ラニラピッド錠0.05mg 0.5錠
フルイトラン錠1mg 分1 朝食後
エディロールカプセル0.75μg 1C
メマリーOD錠10mg 1錠 分1 夕食後
シグマート錠5mg 2錠 分2 朝夕食後
エンシュア・H750ml 分3 毎食後
その後、食欲は少しずつ回復してきました。しかし、せん妄が現れるようになり、ジプレキサ2.5mgを追加しました。フルイトランは中止し、メマリーも漸減、中止しました。エンシュアは飲むと下痢になるためほとんど摂取できませんでした。
その後、昼夜逆転がみられるようになり、ジプレキサをセロクエルに変更。現在は以下の処方薬になっています。
ラニラピッド錠0.05mg 0.5錠 分1 朝食後
エディロールカプセル0.75μg 1C
セロクエル25mg錠 1錠 分1 夕食後
シグマート錠5mg 2錠 分2 朝夕食後
現在、食事は3食を全量摂取でき、夜も眠れています。また、訪問リハビリによりADLも改善し、見守りの上で歩行器歩行もできています。バーセルインデックス(ADLを評価する指数。点数が高いほど自立している)も2か月半で5点→65点に大幅に回復しました。ここまでうまくいくことも珍しいですが、こういった症例もありますので取り上げてみました。
(投稿者:斉藤 揚三)