裂創の難治症例
2021.06.01
90代女性。施設入居中。左下腿前面の裂創を受傷。施設の判断で湿潤療法をしていたが良くならないとのことで、受傷後2週間くらい経ってから相談がありました。
鑷子で創内をさぐってみると、黄色い丸の部分のえぐれた皮膚が皮下にめり込んでいる状態でした。また創周囲の皮膚に赤みと毛嚢炎がみられました。
鑷子を用いてめり込んだ皮膚を引っ張りだし、可及的に元の位置に戻し、生理食塩水で洗浄しました。処置後の写真が下の写真です。受傷から2週間経過していたので、ここまで戻すのが精一杯でした。
処置で出血したため、当日はヘモスタパッド(アルギン酸塩)を当て、その後も湿潤療法を継続するように指示。また、創周囲にはゲンタシン軟膏を塗布するように指示しました。
処置31日後、痂疲化して治癒しています。
傷は湿潤療法さえしておけば治るわけではありません。正しい考え方の下で湿潤療法をしなければならない教訓として載せてみました。
この症例は、剥離した皮膚が皮下にめり込んでいたため、いつまでたっても治りませんでした。また、創傷治癒には無理な状況だったため、浸出液が多くなり、周囲の皮膚がただれてしまうという悪循環に陥っていました。それを解除したところ、すぐに治癒に向かいました。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:創傷治療