褥創治療の症例②
症例:81歳女性
在宅医療に至った経緯:高血圧、慢性心不全、心房細動、糖尿病、脂質異常症の診断で病院に通院していた。R1年〇月、自宅で倒れていたところを発見され、自宅での生活が困難とのことで施設に入所。入所して約1か月後、病院への通院が難しく当院の訪問診療が依頼された。
初診時:車椅子に全介助で移乗するレベルのADLでした。事前情報にはありませんでしたが、仙骨部に褥創ができていることを報告されました。褥創は施設入所後からひどくなってきているとのことでした。
仙骨部に4度褥創がみられました。黒色壊死組織は可及的にデブリードマンしました。
処置は1日1回の洗浄と穴あきポリ袋入りオムツで覆うように指示しました。また、エアマットレスの導入を指示し、前医から処方されていた、ミノマイシン、アンプラーグ、ゲーベンクリームは中止を指示しました。
9日後:38.2℃の発熱がみられるとのことで往診しました。仙骨部褥創には悪臭があり、褥創感染と診断し、黒色壊死組織は再度デブリードマンし、抗生剤の点滴をしました。翌日からは抗生剤は内服に切り替え、計4日間投与しました。11日後にもデブリードマンしました。
※デブリードマンは壊死組織をとるというよりも、ドレナージ目的に行うのが良いと考えています。壊死組織は自己融解するので、完全に取り切れなくても大丈夫です。デブリードマンはこまめに行うのが良いです。
27日後:感染はコントロールされました。大分肉芽が上がってきています。
36日後:褥創が尿で汚染されるのと、トイレに行く度に膝を痛がるとのことで、膀胱留置カテーテルを挿入しました。
55日後:さらに肉芽が上がり、褥創はどんどんふさがってきています。
90日後:ついに褥創は閉鎖しました。膀胱留置カテーテルは抜去しました。
施設での食事(栄養)と処置が良かったので、ひどい褥創でしたが3か月で治りました。
(投稿者:斉藤 揚三)