食生活と身体の退化
『食生活と身体の退化-先住民の伝統食と近代食 その身体への驚くべき影響ー W.A.PRICE 恒志会』
この本は、歯科医師のプライス博士が、世界中の先住民の口腔内の状態を調べて報告した本で、1939年にアメリカで出版されました。今から約80年も前に出されたというのが驚きです。
以前このブログで、日本中の村の食生活を実地調査した「日本の長寿村・短命村」という本を紹介しました。一方、これとほぼ同時代の交通機関が発達していなかった時代に、イヌイット、インディアン、メラネシア人、アフリカの部族、アボリジニーなど、世界中の先住民族の食生活と口腔内の関係を実地調査していた方がいたのです。伝統食を続けている先住民が少なくなっている現代では、非常に貴重な資料にもなっていると思われます。
本書によると、世界中のあらゆる先住民は例外なく、近代商業食品(精白小麦粉、砂糖、精白米、植物油、缶詰食品)が入ってくると、虫歯が蔓延し、歯列弓の不正から乱杭歯、鼻孔の狭小化から口呼吸になり、また、結核などの伝染病、関節炎にかかる人が多くなります。一方で、伝統食を守って食べている先住民には虫歯はほとんどなく、いたって健康なのです。
このことが、豊富な写真によって、一目瞭然で分かるようになっています。
先住民の伝統食と近代食を比較すると、近代食ではビタミンやミネラルが圧倒的に不足しています。これが、身体の退化に関係しているのではないかと本書では考察しています。身体の退化には、目に見える形で現れる虫歯や乱杭歯だけではなく、目に見えない脳の障害=精神障害も含まれます。
逆に言えば、虫歯、伝染病、慢性関節炎、精神障害などは、栄養状態を改善させることで治る可能性があるということです。私たちは、最新の栄養学ではなく、先住民の知恵から学ぶ必要があるのではないかと思います。
本を買う余裕がない方は要約がpdfで公開されていますので、こちらを見てみてください。
(投稿者:斉藤 揚三)