高齢者に対するモビコール配合内用剤の使用経験
浸透圧性下剤としては酸化マグネシウムを処方し、特に問題は感じていませんでしたが、昨今、高マグネシウム血症の問題が言われるようになってきています。
※血清マグネシウム濃度と症状
血清Mg濃度(mg/dL) | 症状 |
4.9~ | 悪心・嘔吐、起立性低血圧、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠、全身倦怠感、無気力、腱反射の減弱など |
6.1~12.2 | ECG異常(PR、QT延長)など |
9.7~ | 腱反射消失、随意筋麻痺、嚥下障害、房室ブロック、低血圧など |
18.2~ | 昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止など |
血清マグネシウム濃度の正常範囲は1.8~2.6mg/dL
そこで、当院では、酸化マグネシウムを処方している患者さんの血清マグネシウム濃度を調べてみました。
すると、特に、酸化マグネシウムを極量内服している方、腎機能が低下している方に正常値をこえる方がいることがわかりました(最大で4.2mg/dL)。症状が出るほどの高値になっている方はいませんでしたが、予想以上に高値になっていました。
酸化マグネシウムの代わりになる薬剤としては、2018年11月~モビコールが処方できるようになっています。
モビコールの作用機序は、主成分のポリエチレングリコールの浸透圧効果により、腸管内の水分量が保持され、その結果、便中水分量が増加し、便が軟化、便容積が増大することで、生理的に大腸の蠕動運動が活発化し排便が促されるというものです。
薬の特性として、腸管からほとんど吸収されないので、副作用は起こりようがありません(安全な薬だと考えられます)。欧米では昔から使われており、下剤の第一選択薬になっているとのこと。併用禁忌の薬もありません(酸化マグネシウムには併用注意の薬が数多くあります)。
そこで、現在当院では、高マグネシウム血症のリスクが高い患者さんでは、酸化マグネシウムからモビコールに変更しています。モビコールを処方しはじめてから、ある程度症例も増え、薬の特性も分かってきました。
水に溶かして服用するところが面倒ですが、下剤としての効果は高い印象です。酸化マグネシウムより排便がスムーズになる方が多いです。浣腸などの刺激性下剤が必要なくなった方もいました。
酸化マグネシウム1gをモビコール2包で換算すると丁度よい感じです。また、即効性はなく、効果は徐々にでてくるのが普通です。そのため、頓服ではなく、毎日服用するのが基本です。
いずれにしても個人差がみられる薬なので、少量から始めて調整していくのが導入するうえでよいのではないかと考えます。
(投稿者:斉藤 揚三)