高齢者の皮膚乾燥の対策
冬になると空気が乾燥し、皮膚の乾燥に悩まされる方が多くなります。
特に高齢者は皮脂が少なく、容易に乾燥します。訪問診療でも、皮膚の乾燥にはよく遭遇します。
皮膚の乾燥に対して当院ではどのように指導しているかについて解説します。
ポイントは皮脂を落とさないことです。外側から何か(外用薬など)を足すのではなく、引かないという考え方をします。
皮脂は皮膚を守るためにあります(正確には、皮脂が皮膚の角質表面をコーティングし水分の蒸発を防ぎ、また皮膚常在菌の生息環境を守ります)。
皮脂を落とす習慣はすべてやめてもらいます。
①入浴回数を減らす。
皮脂は水溶性のため、風呂に入る度に皮脂が洗い落とされてしまいます。具体的には入浴を週1回などにします。
②石鹸、ボディーソープ、シャンプーは使わない。
石鹸、ボディーソープ、シャンプーは界面活性剤です。界面活性剤には乳化作用(洗浄力)があり、皮脂を落としてしまいます。弱酸性であっても、植物性であっても、無添加であっても、皮脂を落としてしまうことには変わりありません。種類の問題ではありません。
③ナイロンタオルは使わない。
体をナイロンタオルでこするのは皮脂を落とし、また皮膚を傷つけるので止めます。体をこすらなくても、湯船に浸かるだけで汚れは落ちます。
④保湿クリームは使わない。
保湿クリームには合成界面活性剤が入っています。保湿クリームを塗ると、皮脂は落ちてしまい、逆に皮膚は乾燥します。保湿剤としてはワセリンを使います。ワセリンが皮膚をコーティングし、皮膚の乾燥を防ぎます。
毎日風呂に入って、体を石鹸でごしごし洗い、入浴後に保湿クリームをつけることはすべて皮膚を乾燥させる行為なのです。
参考図書:患者よ、医者から逃げろ 夏井睦 光文社新書
(投稿者:斉藤 揚三)