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在宅医療で腰椎圧迫骨折を管理する方法

脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。
今回は「脊椎圧迫骨折を在宅医療で管理する方法」について書いていきます。
必ずしも入院による管理は必要ではありません。

○受傷機転
脊椎圧迫骨折は典型的にはしりもちをつくような受傷機転となります。つまり後方に転倒しています。前方や側方に転倒した場合は、典型的ではありません。まずは、どの方向に転倒したのかを聴取します。なかには骨粗鬆症が重度のために、転倒歴はなく、少し無理をした程度のことで骨折する方もいます。いわゆる「いつのまにか骨折」と言われているものです。

○問診
問診で一番大切な質問は「寝て起きる時が大変ではないですか?」です。
圧迫骨折を起こしている方は布団から起き上がるまでに30分くらいかかってしまう方もいます。
しかし、一旦立ってしまうと、歩けてしまう。これも特徴的な所見です。

○身体所見
脊椎棘突起の叩打痛を胸椎から腰椎下位レベルに至るまでとります。
しかし骨折があるからと言ってかならずしも叩打痛があるとも限りません。
また側胸部や側腹部に放散痛が生じていることも多いです。
内科で肋間神経痛などと診断され圧迫骨折が見逃されていることがあると思われます。

○診断
レントゲン撮影をしても、確定診断はできません。それは、椎体がつぶれていても、今つぶれたのか、昔からつぶれていたのかわからないからです。
レントゲンで診断するには、立位と臥位のレントゲンを比較したり、経時的にレントゲンを撮影し椎体がつぶれてくるのを確認しなければなりません。
どうしても確定診断したければ、MRIをとればいいのですが(感度99%・特異度98.7%,椎体内がT1 low,T2 脂肪抑制でhighを確認)、検査のため仰向けに30分くらい寝てなければなりませんし、確定診断したところで治療は大きく変わらないので、ルーチンにやるようなものでもありません。
在宅医療では検査機器が限られてきますが、問診や身体所見でほとんどが診断することができます。

○治療
骨折部がある程度安定し痛みがとれてくるまでは3週間くらいはかかります。それまではベッド上になっていてもしょうがないと思われます。ベッド上での体位としては側臥位を推奨します。仰臥位で寝ると骨折部が開く方向に力がかかるからです。また、寝返りもできないくらい痛みがひどい場合は、褥創発生リスクが高まりますのでケアマネージャーに連絡し、エアーマットレスの導入を検討します。さらに、訪問リハビリを導入して、ベッド上の運動をするとなお良いと思います。
コルセットは作ってもよいのですが(業者さんによっては在宅でも作ってもらえます)、せっかく高いお金を払って作ってもらっても結局使ってもらえないこともあります。そのため固定性は全くありませんが、腰椎バンドを処方することがあります。
適応外の使用法であり、またエビデンスはありませんが、骨癒合を早める目的でPTH製剤(フォルテオやテリボン)を導入することができます。実際、PTH製剤を使った場合、痛みが早くとれる印象があります。圧迫骨折を起こすということは、骨粗鬆症が背景にあるので、PTH製剤の使用は可能です。注意点としては圧迫骨折の鑑別疾患として癌の骨転移があり、その場合は禁忌となるので、その可能性がないかを考えなければなりません。また、高Ca血症や肝機能障害がでたりする場合もあるので、導入1か月後には採血で評価します。骨癒合を目的とするならば3ヶ月で終了し、骨粗鬆症の治療をそのままするのであれば2年間継続します。

○経過
1週間寝たきりになっているだけで筋力は10~20%低下するといわれています。3週間を経過し痛みが落ち着いてきたら、徐々に離床してもらいます。
3ヶ月で骨癒合は完成し、痛みはなくなるのが普通です。それまではNSAIDsで疼痛コントロールをします。痛みが3ヶ月を超えて続いているような場合には、偽関節になっている可能性や癌の骨転移の可能性もあるので精査も検討します。

○注意点など
ほとんどの症例が上記の対応で問題なく治りますが、注意しなければならないのは破裂骨折です。
破裂骨折とは椎体後壁が脊柱管内に突出する骨折です。脊柱管内に大きく突出した場合、脊髄や馬尾神経を圧迫し、膀胱直腸障害や下肢のしびれ、麻痺が生じることがあります。その場合は手術になる可能性がありますので注意が必要です。
最初から破裂骨折のこともありますし、圧迫骨折が経過中に破裂骨折になることもあります。

経皮的椎体形成術は否定的な論文がでているため、個人的には推奨しない治療法です。

(投稿者:斉藤 揚三)