緩和医療における嘔気時の対応
2018.03.28
がん患者さんは様々な理由(化学療法、放射線治療、麻薬の副作用、腸閉塞など)で嘔気嘔吐が生じやすくなっています。
制吐剤として、一般的には、プリンペランやノバミンが使われることが多いです。
プリンペランやノバミンの注意点は、どちらもドパミン受容体拮抗薬なので、アカシジアを生じる恐れがあることです。
アカシジアとは、薬剤性パーキンソニズムの一症状で、落ち着かない、じっとしていられない、イライラする、不安感などの症状を言います。
当院でも、初診時にすでにノバミンが処方されていて、1日中家の中を歩き回っている症例を経験したことがあります。
その患者さんにノバミンを止めるなどの薬剤調節を行ったところ、すっかり落ち着いて生活ができるようになりました。
さて、当院では緩和医療における制吐剤に、ジプレキサを使うことが多いです。
ジプレキサは、セロトニン受容体、ドパミン受容体、ヒスタミン受容体、コリン受容体などを遮断する多次元受容体拮抗薬です。もちろんドパミン受容体も遮断するため、前述したアカシジアを生じる恐れもあります。
1日1回の投与で良い(半減期が33時間で作用時間が長い)ことと、OD錠(ジプレキサザイディス)が存在することが緩和医療で使う上での利点になります。また、食欲増進や体重増加の副作用がありますが、その点もがん患者さんには利点になります。
しかし、糖尿病の方には使えないことと、抗コリン作用もあるので、せん妄を生じる恐れがあることには注意が必要です。
処方例:ジプレキサザイディス2.5mg or 5mg 1錠 分1 就寝前
(投稿者:斉藤 揚三)