在宅での皮下点滴の方法
老衰の末期や末期がんなどで食べられなくなった患者さんを、当院では多数診ていますが、そんな患者さんが点滴を希望された場合、皮下点滴を多用しています。
皮下点滴のメリットはいろいろあります。
まず、高齢になると末梢血管が見えづらかったり、すぐに漏れてしまったりします。何回も失敗して刺すのは気の毒です。
また、在宅では、医療者が常に見ているわけにはいきませんし、せん妄などで抜去されても出血しないので安全です。
医療知識に乏しい家族であっても簡単に管理できます。
血管内に無理やり入れるわけではなく、皮下に入れて吸収されるのを待つ形なので、より自然ですし、過剰輸液の心配がありません。
体にとって必要な分だけ吸収されるというイメージです。
デメリットとしては、急速に入れることができないこと(しかし急速に入れなくてはいけない場面はほとんどありません)、急速に入れると痛みが出ることくらいです(急速に入れないようにすればよいだけです)。
では、実際のやり方を紹介します。
場所は腹部か肋間を選択することが多いです。認知症などで抜針してしまう方には背部を選択します。
①刺入する部位をアルコール綿で拭き、刺入する部位の手前にあらかじめテープを貼っておきます。皮膚を軽くつまみあげて、22Gのサーフロー針を浅い角度で刺します。
②すると接続部がテープの上にきます。刺入部には感染していないかの確認ができるように、透明のフィルムを貼ります。
③ラインはループを作るようにして固定します。
④ラインの途中に着脱可能な接続部(セーフタッチプラグ®など)をかませるのがポイントです。(点滴が終わったら、セーフタッチプラグから外してもらうことを家族に指導するだけで済むからです。外すことができないようであれば、終わってもそのまま放置してもらいます。つまり抜針にいかなくてもよくなります。)
その他の注意点など
・点滴の種類は気にしなくて大丈夫です。抗生剤も投与できます。
・慣れてくれば、点滴とラインを渡し、ご家族だけで毎日点滴することもできます。
・サーフロー針の差し替えは1週間に1回で大丈夫です。左右を変えて差し替えます。
・点滴の速度は腫れ具合によって変わるのであまり神経質になる必要はありませんが、500mlを5~10時間で入れることを目安にします。
・点滴が落ちなくなった場合には、腫れた皮下組織をマッサージすると落ちるようになることもあります。
・高齢者の場合、維持液500~700ml/日で必要十分の水電解質が補充されると言われているので、当院では維持液500ml/日とすることが多いです。
・皮下点滴を連日続けていると、食欲が回復し、食べられるようになって皮下点滴が不要になるといったこともよく経験します。
(投稿者:斉藤 揚三)