主訴:立ち上がれない
2022.01.29
症例:認知症があり独居の80代男性
ADLは自立歩行レベルですが、ふらつきがみられています。ヘルパーとデイサービスを利用しながら、自宅で生活していた患者さんです。
とある日曜日にヘルパーが訪問したところ、こたつから起き上がれなくなっていたそうです。動けないため臨時でデイサービスに泊まり、翌日に診察依頼がありました。痛みもなく、バイタルサインにも異常がないとのことでした。
全身の診察をしてみると、左鼠径部に圧痛を認めました。左股関節に他動時痛はありませんでした。
本人に転倒したかどうか確認したところ、認知症のため全く分かりませんでした。
左大腿骨近位部骨折が否定できないため、レントゲンを撮ってみました。
左大腿骨近位部骨折はありませんでしたが、左恥坐骨骨折(黄色矢印)がありました。これは、身体所見とも合致していました。
念のため、仙骨骨折や腸骨骨折を合併していないか骨盤のレントゲンも撮りましたが、それらは否定的でした。
恥坐骨骨折は荷重に影響しない骨折のため、疼痛に応じて荷重を許可しました。
その後、元のように歩けるようになり、自宅に戻りました。
認知症のため、痛みの訴えもなければ、転倒したことも忘れていました。全身をくまなく診察することによって、立てない原因として骨折を疑い、診断することができた症例でした。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:整形外科