歩けていれば骨折は否定できるか?
2022.02.19
高齢者が転倒して股関節を痛がっていれば、大腿骨近位部骨折を疑います。
大腿骨近位部骨折の場合、救急外来にこのような姿勢でストレッチャーで運ばれてくることがほとんどです。
しかし、大腿骨近位部骨折を受傷したにも関わらず、歩いて受診される方もまれにいます。
その際に、「歩けているので骨折はない」と判断すると失敗します。
大腿骨頸部骨折で骨折部にズレがほとんどなく、骨折部が嚙みこんでいる場合に、痛みがありながらも歩けることがあります。あるいは、不顕性骨折(occult fracture)という、レントゲンで分からないタイプの骨折もあります。
このような時に、「歩けているので骨折はない」と判断してしまい、痛いながら歩いていると、最終的に骨折部が大きくズレてしまいます。
これの何が問題かと言うと、一般的に、骨折部がズレていない場合は、スクリューやピンで固定する侵襲が少ない手術で済むのに対し、ズレてしまうと、人工骨頭置換術という、侵襲がより大きな手術になってしまうからです。
そのため、大腿骨近位部骨折を疑うが、レントゲンで骨折が分からない場合は、CTやMRIの検査まで必要になることもあります。
(投稿者:斉藤 揚三)
カテゴリー:整形外科